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今年の桜も 風に散らされて終わった 以前住んでいた土地での 私の散歩コースは 手付かずの自然のままの河原のある土手だった その土手には 桜や柳が何本もあって 仕事が終わり 夕方その木々をなびかせる風を感じながら 夕焼雲と清流を見ながら歩くのが なにより楽しかった その土手の下に数件の家がある 昔ながらの日本家屋で 広い庭には柵もなく 野菜や花が植えられている その道寄りの一角に 小さな犬小屋と柴犬がいた 子犬なのか マメシバが中途半端な大きさに育った大人なのか よく分からないが いつも元気に飛び跳ねている 初めて見かけた時は 雪がちらついていて そのこは 雪のひとひらひとひらを 全部つかまえてやる勢いで くるくる回転しながら 空に向かって口をパクパクさせていた (あほ・・・) 笑うと キラキラの目をちらりと私に向けたが 吠えもせず また雪に夢中になった それから 私は必ずその道を通るようになった 遠くから 私を見つけると はよ来い! 遅い! 足短いのか! とせかしながら 鎖をジャラジャラいわせ 回りながら待っていた やがて桜が満開となり やがて散りはじめると 桜の花びらを追って くるくるぴょんぴょん ”よく まわるな~” しゃがんで 耳にくっついた花びらをとってあげていると ピュン!と一陣の風が吹いて 私たちは花吹雪の渦の中にいた そのこは もうたまらん! とばかりにくるくる舞いして 私達は 花びらまみれになっていた 夏はさすがにおとなしく日陰で寝てるだろうと思っていると ヒマなのか 自分のしっぽを追いかけてくるくるしている 秋は 木の葉を追いかけて くるくるしている いつか私は そのこを くるくると呼んでいた その間 その家のひとには一度も顔を合わすことがなかったので 名前も聞けないでいたからだ また冬が近づいたころ 土手の上を歩いていると 向こうから くるくるがリードをつけられて歩いてきた 顔見知りの私を見つけると 驚く家人を引っ張ってまっしぐらに走ってきた ”さんぽ、さんぽ、さんぽしてるよ~~!!” (見たらわかる! そんなにおばさんを引っ張るな!) いつもちょっかい出させてもらってました とも言えず ”かわいい犬ですね~ お~よちよち お名前は?” とごまかすと ”みなみ ちゃんです 隣の家の犬なんですけどね” (みなみちゃん?! そんな可愛い名前だったのか、くるくる!) そっか、見かけないと思ってたけど みなみちゃんの家の人は 忙しくて 散歩にもいけないんだな よしよし、これからも私が散歩のたびにちょっかいだしてやるから! その土地の冬ははやい ある朝 突然に雪景色になることもある その日も 夕方外にでると 雪が舞っていた 遠くから 雪の中にくるくるがみえた しかしその日は なかなかこちらに気付かない 雪のせいだな・・ そう思いながら すぐ近くまで行っても くるくるは 一点を見つめたまま動かない 4本の足をふんばって 耳をぴんと立てて 頭も鼻も まつ毛も 雪で真っ白にしたまま微動だにしない ・・・・・ たとえ犬であっても 声もかけられない空気というのはある みなみちゃんは 家のほうをみつめたまま その日一度も振り向かなかった 翌々日 またその道を通ると 家には紫と白の幕が張られて 「忌」 の文字が読めた 誰か亡くなられたのか・・・ 犬小屋の前に みなみちゃんの姿はなかった ジャラジャラならしてた鎖だけが置かれている その後 なんどその道を通っても 二度とみなみちゃんに会うことはなかった あの日 雪の中で立ち尽くしたまま みなみちゃんは何を見ていたのだろう? 家の中で起きていることを 体中で一心に感じとっていたのだろうか? 冬が行き 桜の咲く前に 私はその土地を離れた 桜吹雪のなかで 花びらまみれになって犬と笑った たったそれだけの なんでもない記憶 なのに その季節になると必ずよみがえる 思い出という名の一瞬があるのだと思う
by kami-therapy
| 2018-04-17 16:08
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