屋久島 縄文杉

屋久島の縄文杉には　いつか会いたい　と思っていた

”行きたいね”　と話の合った友人と　とんとん拍子に旅行は決まり
出かけたのは　数年前　12月も押し詰まった頃だった

なにもそんな時期　ではあるが　
いつもながら　思い立った時が出かける時なのだ

着いた日の翌朝早く　ホテルまで迎えに来てくれたガイドさんの車で
真っ暗な中　登山口へ向かった

往復10時間の道のりである

山小屋で泊まる人たちは別として　日帰りで縄文杉まで往復しようという人達は
だいたいこの時間に出発するようだ

あいにくの小雨だが　雨は屋久島ではお約束らしい
カッパを着て3人は歩きだした

私達の昼食もガイドさんが準備し持ってくれているので　荷物もないが
滑らぬよう歩くだけでも　なかなか大変だ

ガイドさんが　道々　話し出す

”この間　東京の「歩こう会」の一行を案内したら
　そこの会長さんが一番先に足やられて　泣く泣く途中棄権したわ　ひゃひゃ”

日頃　足腰をまるで鍛えていない私たちに　軽いおどしか・・笑えやしない・・

1時間半ほど歩いたころ
小雨ながら　白々と夜も明けてきた

ぬかるみ道にも慣れてきて　少しまわりを見渡す余裕も出てきたころ
前を歩いていたガイドさんが　突然　立ち止まった

”あっ！”

”えっ？”　　なにか出たのか、と周りを見回す

振り返ったガイドさんが　私達をにらむように叫んだ

”あんたらの　弁当　忘れた！”

”・・・・・”

”・・・・・”

こけし状態で　その場に立ち尽くす私達に　再度言い聞かせるように　大声で叫んだ

”わし、あんたらの弁当を　車の中に　忘れたっ！！”　

”・・・・・・・・・・・”

いくら　こけし化していても　耳は聞こえているし　意味もわかる

ただ　信じたくなかった